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買取再販の「正解の戦略」を知りたいなら、実は無料で読める一次資料があります。上場している買取再販企業のIR資料・決算説明です。彼らは投資家向けに、粗利率・在庫の回転・仕入れの考え方を数字で開示しています。
この記事では、買取再販を主力とする上場3社——カチタス(戸建て・地方)、スター・マイカ(区分・オーナーチェンジ)、インテリックス(都市部の区分リノベ)——のIRから読み取れる「勝ち筋」を整理し、自社の仕入れ判断にどう落とし込むかまで具体化します。さらに後半では、2026年に入って金利上昇・中古相場の頭打ちで各社の明暗が分かれ始めた"潮目"を、最新の決算から読み解きます。
先に結論: 大手3社に共通するのは「①自社の主戦場(物件タイプ×立地)を絞り、②そこでの粗利率水準を把握し、③在庫を寝かせず回し、④仕入れの"源泉"で競合を避ける」という型です。規模が違っても、この4点は中小の仕入れ判断にそのまま応用できます。
※本記事の数値は各社の公開IR・決算説明・公開記事に基づきます。会計期・集計範囲・分母の定義が各社で異なるため、単純な優劣比較ではなく「考え方の参考」としてお読みください。出典は記事末尾に記載します。
3社の立ち位置——同じ「買取再販」でも戦い方は違う
まず、3社がどこで戦っているかを整理します。同じ買取再販でも、物件タイプ・エリア・利益の作り方がまるで違うのがわかります。
| 会社 | 主戦場 | 立地 | 利益の作り方 |
|---|---|---|---|
| カチタス | 戸建て中心・低価格帯 | 地方都市(人口5万〜30万人) | 築古を安く仕入れ、リフォーム内製で再生。新築の半額程度で販売 |
| スター・マイカ | 区分マンション | 都市部中心 | 賃貸中(オーナーチェンジ)で仕入れ、賃料を得つつ退去後にリノベ再販 |
| インテリックス | 区分マンション(リノベ) | 都市部中心 | 仕入れ〜販売の「事業期間」を短く回し、鮮度の高い在庫で収益性を確保 |
ポイントは、3社とも「自分が勝てる土俵」を明確に絞っていること。誰もが同じ物件を奪い合っているわけではありません。ここが最初の学びです。
学び①:粗利率は「物件タイプ × 立地」でここまで変わる
各社が開示する売上総利益率(粗利率)を並べると、水準が大きく違うことがわかります。
- カチタス(戸建て中心・地方):全社(連結)の売上総利益率は2025年3月期 23.7% → 2026年3月期 23.3%(消費税差額の調整後で24.4%)、営業利益率12.0%。中核のカチタス単体では粗利率26.5%(調整後27.7%)・営業利益率13.7%と、連結より一段高い水準です(いずれも2026年3月期)。
- スター・マイカ(区分・オーナーチェンジ):会社はリノベ販売を「OCリノベ(賃貸中で仕入れ→退去後にリノベ販売)」「空室リノベ」「OCその他」に分けて開示。OCリノベが最も高収益(2026年11月期 第2四半期で総利益率27.4%)で、空室リノベは約10〜12%と差が出ます。リノベ売買全体の総利益率(販売時・評価損含まず)は14.5%(2025年11月期)→19.3%(2026年11月期 第2四半期、販売日数94日)。
戸建て・地方を主戦場とするカチタス(単体27%台)の粗利率が、区分の空室リノベ(約10〜12%)より厚いのは偶然ではありません。競合が少なく、リフォームの付加価値を乗せやすい領域を選んでいるからです(※基準や区分の定義が各社で異なるため、単純比較ではなく水準感の参考として)。
自社への落とし込み: 「業界平均は何%か」を探すより、自社の主戦場(区分か戸建てか/都市か地方か)に近い水準を参照値にするのが現実的です。粗利率の出し方と自社基準の決め方は、こちらで詳しく解説しています → 利益率
学び②:在庫回転=利益の生命線。「寝かせない仕組み」を持つ
IRを読むと、大手が在庫を寝かせないことに強くこだわっているのがわかります。
- カチタス:在庫のキャッシュ化速度を重視。在庫回転率(連結・LTM)は2025年3月期末 1.74回 → 2026年3月期末 1.63回。積極仕入れで在庫を積みつつ(販売用不動産は前期比+32%)、回す前提で攻めています。
- インテリックス:仕入れ〜販売の「事業期間」を経営管理指標として明示し、事業期間が粗利益率と相関するという前提で管理しています。直近(2026年5月期 上期)は販売期間の短縮が寄与し、リノベーション事業の粗利益率は13.4%。粗利益率を12〜13%の標準水準に保つ、という関係を開示しています。
注目すべきは、インテリックスが「事業期間と粗利益率は相関する」と位置づけ、期間そのものを管理指標にしている点です。保有が長引くほど金利・固都税・値下がりリスクが利益を二重に削る——だからこそ「何日で回すか」を数字で握るわけです。
自社への落とし込み: 「いくらで売るか」だけでなく、「何日で売り切るか」の上限ルールを持つこと。例:保有90日を超えたら価格を見直す、など。保有コストの計算と回転の考え方はこちら → 保有コスト/在庫回転
学び③:仕入れの「源泉」を設計し、競合を避ける
利益率や回転の前に、そもそもどこから・どうやって仕入れるかで勝負はほぼ決まります。3社の仕入れ設計は対照的で、示唆に富みます。
- カチタス:地方・築古・戸建てという大手が手を出しにくい領域を、自社の調査力・リフォーム企画力で取りに行く。価格競争になりにくい仕入れ源を押さえています。
- スター・マイカ:オーナーチェンジ(賃貸中)物件を買うという独自ルート。空室の区分は競合が多いですが、賃貸中物件は買い手が限られるため競合を避けつつ仕入れられ、賃料収入も得られる。退去(=空室化)を「リスク」ではなく「再販で利益を実現できる機会」と捉える発想です。
つまり両社とも、「みんなが欲しい物件を高く奪い合う」ことを避ける仕入れ設計をしています。これは中小にとっても再現性のある考え方です。
自社への落とし込み: 自社だけが拾える仕入れチャネル(地縁、相続・空き家の情報、士業連携、オーナーチェンジなど)を持てるかが、粗利率を左右します。仕入れルートの作り方はこちら → 仕入れルート/区分と戸建ての違いも参考に。
学び④:リフォームの内製化・標準化で粗利を守る
カチタスは強みとして「調査力・リフォーム企画力・施工力」を挙げています。リフォームを外注任せにせず、企画と施工をコントロールできることが、コスト管理と品質の両面で粗利を守る土台になっています。
規模の小さい会社がすべてを内製化するのは現実的ではありませんが、「どの工事を・いくらで・どの業者に」を標準化しておくことは、規模に関係なく効きます。リフォーム費用のブレは、そのまま粗利のブレになるからです。
自社への落とし込み: 仕様と単価の標準化、信頼できる施工パートナーの固定化。これだけでも見積もり精度と粗利の安定が変わります → リフォーム費用/コスパの良いリフォーム
学び⑤:2026年の潮目——「保有中に上がる」前提が終わり、金利で明暗が分かれる
ここまでは各社に共通する「型」でしたが、2026年に入って外部環境が転換点を迎えています。ここに、大手3社の反応の違いがそのまま示唆になります。
まず市況の変化。 首都圏の中古マンション成約㎡単価は、長く続いた上昇が止まり、2026年5月に約6年(73か月)ぶりに前年同月比マイナス(−3.9%)へ転換しました(東日本レインズ)。成約件数も減り、特に東京23区は前年比−17.9%と急減する一方、千葉・神奈川・埼玉はプラスと、需要の郊外シフトが起きています。金利も、日本銀行が2026年6月に政策金利を1.0%程度(約31年ぶりの水準)へ引き上げ、フラット35(最低金利)は2026年1月に現行制度で初めて2%を超え、6月には3.21%まで上昇しました。
この「相場の頭打ち+金利上昇」は、買取再販の収益構造を直撃します。 これまでは仕入れてから売れるまでの間に相場が上がり、"保有が結果的に得をする"局面もありました。しかし相場が頭打ちになれば、保有の長期化はそのまま値下がり・金利負担のリスクに変わります。
大手3社の反応は、実は正反対です。
- カチタス(地方・戸建):会社は買主の住宅ローン金利上昇について「新築検討層の流入が見込めるため当社への影響は中立」とし、新築価格の高騰で「構造的に有利な状況が継続」と説明。むしろ在庫を前期比+32%積み増して積極仕入れを続けています。地方・戸建・低価格帯という土俵では、金利上昇はむしろ「割安な中古への追い風」になりうる、という読みです。
- インテリックス(都市・区分):一方でこちらは金利上昇が数字に効いています。在庫増と金利上昇で営業外費用が約1割増、経常利益は減少見込み(上期の支払利息等は前年同期比+約51%)。だからこそ事業期間(=回転)を締め、粗利率を12〜13%の標準に保つ管理を強めています。
- スター・マイカ(区分・オーナーチェンジ):賃貸中(オーナーチェンジ)で仕入れる同社は、保有中も賃料収入が入るため、金利負担を賃料で一部相殺できる構造。加えて変動金利借入残高の約6割を金利スワップで固定化し、金利上昇の業績インパクトを抑えています。
なお、市場そのものは縮んでいません。 新築マンション・戸建の価格高騰が続く限り、割安なリノベ済み中古への需要という土台は残ります(前述のとおりカチタスも新築高騰を「構造的な追い風」と位置づけています)。「相場の追い風が消える」ことと「市場が縮む」ことは別、という点が重要です。買取再販が構造的に伸びる市場である背景は、政府統計ベースの中古住宅 流通シェアの国際比較も参照してください。
自社への落とし込み: ①「保有中の値上がり」を織り込んだ強気の仕入れは危険になった——出口価格は保守的に見積もる。②金利が効く分、回転(保有日数)と仕入れ規律の重要度が一段上がる。③自社の主戦場によって効く手が違う——地方・戸建なら金利に相対的に強く、都市・区分なら回転と資金調達の巧拙がより効く。金利上昇局面の考え方は 金利上昇 も参照。
3社で金利上昇の効き方がどう分かれるか(比較マトリクス)は、専用の分析記事 金利感応度分析 で詳しく掘り下げています。金利負担そのものの価格帯別試算は 金利負担の試算 をどうぞ。
まとめ:大手の「型」は、規模が小さくても真似できる
上場買取再販企業のIRから読み取れる勝ち筋は、突き詰めると次の4点です。
- 主戦場を絞る:物件タイプ×立地で「自社が勝てる土俵」を決める
- 粗利率の水準を知る:自社の主戦場に近い水準を参照値にし、自社基準を逆算で決める
- 在庫を寝かせない:保有日数の上限ルールを持ち、期間で価格を動かす
- 仕入れ源で競合を避ける:自社だけが拾えるチャネルを設計する
どれも「規模が大きいからできる」話ではなく、仕組みと判断基準の問題です。大手のIRは、その判断基準を数字で見せてくれる無料の教科書。定点観測すれば、市場の変化も自社の立ち位置も読みやすくなります。とりわけ2026年は、金利上昇と相場の頭打ちで潮目が変わりつつあり、"保有中の値上がり"を当てにしない仕入れ規律と回転が、これまで以上に効いてきます。
企業別の年間販売戸数ランキングは、データページにまとめています → 買取再販マーケットデータ。買取再販が構造的に伸びる市場である根拠は、政府統計ベースの 中古住宅 流通シェアの国際比較 を参照してください。
自社の仕入れ基準づくりに使えるExcelを配布中
「主戦場の粗利水準」「保有日数の上限」を自社の数字で固めるなら、再販価格・コスト・自社基準から粗利を試算できる「仕入れ可否判定シート(Excel)」が役立ちます。無料で配布しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 買取再販の上場企業にはどんな会社がありますか?
A. 戸建て・地方を主戦場とするカチタス(東証プライム)、区分マンションのオーナーチェンジ買取に強いスター・マイカ(東証プライム)、都市部の区分リノベを手がけるインテリックス(2025年12月より持株会社インテリックスホールディングスとして東証スタンダードに上場)などがあります。
Q. 買取再販の粗利率はどのくらいが目安ですか?
A. 物件タイプと立地で大きく変わります。公開IR(2026年決算)では、戸建て・地方中心のカチタスは全社連結の売上総利益率が23.3%(調整後24.4%)・単体では26.5%(調整後27.7%)〔2026年3月期〕。区分のスター・マイカはリノベ売買全体の総利益率が14.5%(2025年11月期)〜19.3%(2026年11月期 第2四半期)で、賃貸中で仕入れ退去後に売る「OCリノベ」は総利益率27%台と高収益です。業界標準値はなく、自社の主戦場に近い水準を参考にしてください。
Q. なぜ在庫回転(保有期間)が重要なのですか?
A. 保有が長引くほど金利・固都税などの保有コストが増え、売れ残りで値下げすれば再販価格も下がるためです。インテリックスは「事業期間(仕入れ〜販売の日数)」を粗利益率と相関する管理指標として開示しており、直近(2026年5月期 上期)は販売期間の短縮が粗利益率13.4%に寄与したとしています。とくに2026年は金利上昇で保有コスト負担が増しており、回転の重要度が上がっています。
Q. 2026年の金利上昇や中古相場の頭打ちは、買取再販にどう影響しますか?
A. 首都圏の中古マンション成約㎡単価は2026年5月に約6年ぶりの前年割れに転じ、日銀は同年6月に政策金利を約31年ぶりの1.0%程度へ引き上げました。保有中に相場が上がる追い風が弱まり、保有の長期化が値下がり・金利負担のリスクに変わりやすい局面です。ただし新築価格の高騰を背景に、割安な中古・リノベ済み住宅への需要は底堅く(カチタスもIRで外部環境は「構造的に有利」と説明)、「相場の追い風が消える」ことと「市場が縮む」ことは別です。出口価格を保守的に見積もり、回転と仕入れ規律を高めることが有効です。
出典・参考(一次情報・公開資料)
- カチタス(東証プライム・8919)2026年3月期 決算短信・決算説明資料(連結/単体の売上総利益率・営業利益率、販売戸数、在庫・回転、仕入れ・エリア戦略、金利・市況コメント):カチタス IR
- スター・マイカ・ホールディングス(東証プライム・2975)2025年11月期・2026年11月期 決算短信・決算説明資料(OCリノベ等の区分別総利益率、リノベ売買の販売利益率・販売日数、保有戸数、金利対応):スター・マイカHD IR
- インテリックスホールディングス(東証スタンダード・463A / 2025年12月に持株会社化。事業会社は旧インテリックス・8940)2026年5月期 中間決算説明資料(事業期間・粗利益率・在庫・金利影響):インテリックスHD IR
- 中古マンション市況:東日本不動産流通機構(レインズ)月例マーケットウォッチ
- 金利:日本銀行 金融政策/住宅金融支援機構 フラット35 金利情報
- 買取再販の市場動向(中古流通シェア):中古住宅 流通シェアの国際比較(当サイト・国交省統計ベース)
数値は各社の決算開示・公表統計の公表時点のものです。会計期・集計範囲・基準(連結/単体)・区分の定義が各社で異なるため、業界標準値や単純な優劣比較としてではなく、考え方・水準感の参考としてお読みください。
