先に結論: 買取再販の査定書は、「なぜこの価格で仕入れ・売れるのか」の根拠を1枚にまとめたものです。作り方は型があります——①対象物件の情報 → ②採用する査定手法(事例比較/収益還元/原価)→ ③類似の成約事例と数値 → ④補正(築年・階数・時点など)→ ⑤出口価格 → ⑥そこから逆算した仕入れ上限。この順で1枚に落とすと、担当者ごとの判断のブレが減り、売主にも金融機関にも説明できる根拠になります。
査定書というと「提出用の書類」を思い浮かべがちですが、買取再販でまず要るのは社内の意思決定を揃えるための1枚です。この記事では、査定書に何を入れ、どう組み立てるかを実務目線で整理します。査定手法そのものの使い分けは 査定手法の使い分け、成約事例の見方は レインズの成約事例の見方 に譲り、ここは"作り方・項目"に絞ります。
※本記事の数値はすべて例示です。相場・補正率は物件・時点で変わるため、当サイトでは特定水準を断定しません。
査定書は「何のために」作るのか
買取再販の査定書は、次の3つの役割を持ちます。
- ①出口価格の根拠づけ:「いくらで売れるか」を、感覚でなく事例と数値で示す。
- ②社内の判断のブレを消す:誰が査定しても同じフォーマット・同じ観点で見る(属人化の防止= 仕入れ判断の標準化と新人育成 とセット)。
- ③外部への説明:売主への指値の根拠(→ 査定書で価格交渉)、金融機関への説明資料としても使える。
つまり査定書は「根拠を1枚に凝縮した、判断と説明の共通言語」です。
査定書に入れる項目(テンプレート)
最低限、次の項目を1枚に収めます。
| ブロック | 入れる項目 |
|---|---|
| 1. 物件概要 | 所在・最寄駅/徒歩・専有面積・築年・階数/方位・管理状況(区分の場合)など |
| 2. 採用手法 | 取引事例比較法/収益還元法/原価法のどれを軸にするか(+補完手法) |
| 3. 根拠データ | 類似の成約事例(㎡単価・成約時点・面積・築年)/賃料・還元利回り(収益物件) |
| 4. 補正 | 築年・階数・方位・時点などの補正と、その考え方 |
| 5. 出口価格 | リフォーム後に狙える成約価格(㎡単価×面積)。保守/標準/強気の3段でも可 |
| 6. コストと逆算 | リフォーム+保有コスト+諸経費+目標利益 →仕入れ上限 |
| 7. リスク・前提 | 再建築可否・接道・法令・告知事項など、価格を崩しうる論点 |
ポイントは、6の「逆算」まで1枚に載せること。 出口価格だけでは判断できません。出口 −(コスト+利益)= 仕入れ上限まで書いて、初めて「いくらまで出せるか」が言えます(→ 再販価格の決め方)。
手法別の「書き方」——物件タイプで軸が変わる
査定書の3のブロック(根拠データ)は、物件タイプで書き方が変わります。
- 実需向け(区分・戸建て)→ 取引事例比較法が軸:似た成約事例を集め、㎡単価に直し、築年・階数・時点で補正して出口価格を置く(成約事例の見方は レインズの成約事例の見方、区分の具体は マンション査定の進め方)。
- 収益物件(1棟・賃貸中)→ 収益還元法が軸:想定賃料から空室・運営費を引いたNOI ÷ 還元利回りで収益価格を出す(1棟の要点は 1棟の査定書の必要性)。
- 比較事例が乏しい物件 → 原価法で補完:再調達原価から築年減価を引いて、事例比較の裏づけに使う。
どの手法でも、査定書には「なぜその手法か」を一言添えると、社内でも外部でも納得感が出ます。手法選びの原則は 査定手法の使い分け に整理しています。
社内で「同じ査定書」に揃える意味
査定書の効果は、フォーマットを統一して初めて出ます。担当ごとにバラバラの様式だと、比較も引き継ぎもできません。
- 同じ項目・同じ順序で埋める → 物件を見た瞬間に「どこを見るか」が決まり、判断が速くなる
- 数字が残る → 後から「なぜこの価格にしたか」を検証でき、精度が上がる
- 新人でも型に沿って書ける → 育成が早まる(→ 仕入れ判断の標準化と新人育成)
エクセル1枚のテンプレートに落とし込めば、物件情報を入れるだけで出口価格・仕入れ上限の目安まで出る運用にできます(当サイトの「仕入れ可否判定シート」はその簡易版です)。
まとめ
- 査定書は、価格の根拠を1枚に凝縮した「判断と説明の共通言語」。
- 作り方は型:物件概要→採用手法→根拠データ→補正→出口価格→仕入れ上限の逆算→リスク。
- 手法は物件タイプで変わる(実需=事例比較/収益=収益還元/補完=原価法)。
- フォーマットを社内で統一すると、判断が速く・ブレず・引き継げる。
査定書は「提出のための書類」ではなく、仕入れ判断そのものを速く・正確にする道具です。まずは自社の1枚を型にすることから始めましょう。手法の選び方は 査定手法の使い分け、指値への落とし込みは 査定書で価格交渉 もどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. 買取再販の査定書には何を書けばいいですか?
A. 物件概要/採用する査定手法/根拠となる成約事例や収益データ/補正/出口価格/そこから逆算した仕入れ上限/リスク・前提、の順にまとめます。出口価格だけでなく「出口−コスト−目標利益=仕入れ上限」まで1枚に載せるのが実務のポイントです。
Q. 査定手法はどれで書けばいいですか?
A. 物件タイプで変わります。実需向けの区分・戸建ては取引事例比較法、賃貸中や1棟の収益物件は収益還元法が軸で、比較事例が乏しい物件は原価法で補完します。詳しくは査定手法の使い分けの記事を参照してください。
Q. 査定書は社内共通にすべきですか?
A. はい。フォーマットを統一すると、担当者ごとの判断のブレが減り、比較・引き継ぎ・新人育成がしやすくなります。エクセル1枚のテンプレートにして「物件情報を入れると出口価格・仕入れ上限の目安が出る」形にすると、実務で回しやすくなります。
査定書の型(出口価格→仕入れ上限の逆算)は、仕入れ可否判定シートほか実務Excel7点セット(無料)にそのまま落とし込めます。物件情報と自社のGO基準を入れれば、粗利率とGO/STOPの目安が出ます。
▶ 仕入れ可否判定シートほか実務Excel7点セットを無料ダウンロード
出典・参考
- 査定手法(取引事例比較法・収益還元法・原価法)は、不動産の価格評価で一般に用いられる手法です。個別物件の評価・補正・還元利回りの水準は、不動産鑑定士・宅地建物取引士等の専門家にご確認ください:国土交通省 不動産鑑定評価基準等
査定書の様式・項目に法定の決まりはなく、本記事は実務上の一例です。相場・補正率・還元利回りは物件・時点で変動し、当サイトでは特定水準を断定しません。個別の評価は専門家にご確認ください。
