目次
買取再販の粗利計算では、仕入れ価格・リフォーム費・保有コストは丁寧に見るのに、消費税とインボイスの扱いだけは「税理士任せ」になっている会社が少なくありません。ですが消費税は、1件あたりの金額が大きい不動産だからこそ、扱いを1つ間違えると数十万〜数百万円単位で利益がズレる論点です。
しかも2026年は分岐点です。免税事業者からの仕入れに認められてきた経過措置が2026年10月から段階的に縮むうえ、令和8年度の税制改正で控除できる範囲にも見直しが入りました。一方で、買取再販の中心である「個人から中古住宅を買い取って再販する」取引には、宅建業者だけが使える強力な特例があります。この記事では、買取再販の消費税とインボイス実務をプロ向けに整理します。
結論を先に: 買取再販では建物に消費税がかかり(土地は非課税)、免税事業者や個人からの仕入れには段階的に縮減する経過措置があります。ただし宅建業者は、再販目的(棚卸資産)の建物を適格請求書発行事業者以外から買い取る場合、帳簿の保存だけで全額を仕入税額控除できる特例が使えます。最新は国税庁の一次情報と税理士で確認を。
本記事は制度の全体像を実務目線で掴むための概要です。個別の適用判断は、必ず一次情報と税理士にあたってください。
そもそも買取再販の消費税は「どこ」にかかる?
まず前提として、土地付き建物を再販するとき、消費税がかかるのは建物部分だけです。土地の譲渡は消費税が非課税とされています(国税庁 No.6201)。課税事業者が売主となる再販では、売買代金のうち建物相当額に消費税を「預かる」ことになります。エンド向けは税込総額で見せるのが基本ですが、社内の利益計算では建物と土地の内訳を意識しないと預かる消費税を見落とします。
一方、入口側では取得時やリフォーム時に支払った消費税があります。「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて納めるのが基本構造で、この差し引き(=仕入税額控除)をどれだけ取れるかが、買取再販の消費税実務の勝負どころです。納税額は「預かった消費税 − 控除できる支払った消費税」で決まります。
この「控除できるか」を左右するのがインボイス(適格請求書)制度です。原則として仕入税額控除には適格請求書の保存が必要になりました。ここで、取得やリフォームの相手が適格請求書を出せない免税事業者や、そもそも事業者でない個人だったらどうなるのか、という買取再販ならではの論点が出てきます。
免税事業者や個人から仕入れると、仕入税額控除はどうなる?
適格請求書を保存できない課税仕入れは原則として仕入税額控除ができません。ただし、免税事業者など適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れには、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があり、割合は段階的に縮小します。令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、控除割合が見直されました。国税庁が示す改正後のスケジュールは次のとおりです。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
| 2031年10月1日〜 | 控除不可(経過措置終了) |
※国税庁「令和8年度税制改正特集」に基づく。割合・期間は改正で変わり得るため、最新は一次情報で必ず確認してください。
ここで重要なのが、令和8年度改正で加わった上限です。7割・5割・3割控除の期間については、一の適格請求書発行事業者以外の者からの経過措置対象の課税仕入れ合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分には経過措置が使えません(令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用)。特定の免税の工務店にリフォームをまとめて発注する場合など、年間発注額が積み上がりやすい点に注意が必要です。
なお、後述のとおり建物そのものの買い取りには、経過措置とは別の、より有利な特例が使えます。経過措置が主に効いてくるのは、免税事業者に発注したリフォーム工事や仲介手数料など「役務(サービス)」の課税仕入れの場面だと押さえておくと整理しやすくなります。
宅建業者には「帳簿の保存だけで全額控除できる特例」がある?
買取再販業者にとって、最も知っておくべき論点がこれです。結論から言えば、あります。
適格請求書がなくても、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる場合が制度上いくつか定められており、その中に宅地建物取引業者向けの特例が含まれます(国税庁 No.6496)。具体的には、宅建業者が、適格請求書発行事業者でない者から、その者の棚卸資産(=再販目的の在庫)に該当する建物を買い取る場合、帳簿に一定事項を記載して保存することを要件に、仕入税額控除が認められます。これは中古品を扱う古物商の特例や質屋の特例と同じ考え方で、個人や免税事業者から仕入れることが前提の業態に配慮した整理です。
買取再販への当てはめは、次のようになります。
- 売主が個人(消費者)や免税事業者で適格請求書を出せない → 宅建業者特例により、帳簿保存で控除の対象(経過措置の70%などではなく、全額が控除の対象になり得る)
- 売主が適格請求書発行事業者(法人など) → 原則どおり適格請求書を受け取って保存する
つまり、買取再販の主戦場である「個人からの中古住宅の買い取り」は、インボイス制度下でも仕入税額控除で不利になりにくいのがポイントです。「相手が個人だからインボイスが取れず控除できない」は誤解です。ただし、対象は建物のみ(土地は非課税で支払う消費税がない)、買い取る建物が棚卸資産に該当すること、帳簿への一定事項の記載(相手方の氏名・住所など)が要件です。相手が適格請求書発行事業者の場合は原則どおり適格請求書の保存が必要です。
要件の詳細は個別性が高いため、自社の取引フローに落とし込む際は税理士に確認してください。仕入れに付随する各種費用の全体像は買取再販の諸経費で整理しています。
2割特例や3割特例は、買取再販業者にも使える?
負担軽減としてよく話題になる2割特例ですが、買取再販業者は対象になりにくいというのが実務上の理解です。
2割特例は、免税事業者がインボイス登録によって課税事業者になった小規模事業者を対象に納付税額を売上税額の2割に抑える措置で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが前提です。インボイス登録と関係なくもともと課税事業者となる事業者は対象外とされています(国税庁 2割特例概要)。買取再販は取引額が大きく多くの事業者が課税売上高1,000万円を超えるため、インボイスに関係なく当然に課税事業者=2割特例の対象にはなりません。
また令和8年度改正では、2割特例(令和5年10月〜令和8年9月30日を含む課税期間まで)の後継として、個人事業者向けに令和9年分・令和10年分について売上税額の3割とできる3割特例が織り込まれました。こちらも個人事業者が対象で法人は対象外とされ、範囲は限定的です。自社が該当するかは税理士に確認してください。
土地付き建物の再販で、「課税売上割合」に注意すべき理由
もう一つ、買取再販に固有の論点があります。土地の譲渡は非課税のため、土地付き建物を再販すると売上に「課税売上(建物)」と「非課税売上(土地)」が混在します。消費税では課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満のいずれかに該当する場合は、支払った消費税を全額そのまま控除できず、個別対応方式または一括比例配分方式で控除額を計算します。買取再販は土地の非課税売上が大きく課税売上割合が下がりやすい業態のため、「支払った消費税は当然に全額控除できる」という前提が崩れることがあります。もっとも個別対応方式なら建物の取得やリフォームなど課税売上に対応する課税仕入れは控除の対象になり得ます。どの方式を選ぶかで納税額が変わるため、税理士と方針を決めておくべき論点です。粗利計算全体への影響は買取再販の利益率の考え方とあわせて押さえてください。
実務でどう動く?——仕入れ判断に織り込むチェックポイント
ここまでを、仕入れ判断とリフォーム発注の現場で使える形に落とし込みます。
- 建物の仕入れ:売主が個人・免税事業者なら宅建業者特例で帳簿保存により控除の対象(棚卸資産の建物)。適格請求書発行事業者からは原則どおり適格請求書を受け取り保存する
- リフォーム・役務の発注:発注先が適格請求書発行事業者かを契約前に確認。免税事業者への支払いは経過措置の割合まで(2026年10月以降は70%など段階縮小)しか控除できないため、適格請求書発行事業者への発注と税負担込みで比較。特定の免税事業者への年間発注が1億円に近づくなら超過分の不適用に注意
- 出口(再販価格):建物・土地の内訳を意識して預かる消費税を利益計算に反映(エンド向けは税込総額で提示)
- 申告・決算:課税売上割合と控除方式(個別対応方式/一括比例配分方式)の方針を税理士と事前に握る
架空の数値で、内訳を意識した見え方の一例を示します(※架空の記入例です。税額は簡略化しており、実際の適用は要件・時期で変わります)。
| 項目 | 金額(税込・イメージ) | 消費税の扱い(要件確認のうえ) |
|---|---|---|
| 再販価格 | 3,500万円(うち建物1,500万円・土地2,000万円) | 建物部分に課税・土地は非課税 |
| 建物の仕入れ(個人から取得) | 1,000万円 | 宅建業者特例で控除の対象(帳簿保存) |
| リフォーム(適格請求書発行事業者へ発注) | 300万円 | 適格請求書の保存で控除の対象 |
| リフォーム(免税事業者へ発注) | 100万円 | 経過措置の割合まで控除の対象 |
実際の課税・控除・納税額は内訳・要件・課税売上割合・時期で変わります。判断は必ず税理士に確認してください。こうした費目と税を一枚で試算する出発点として、物件情報と自社基準を入れれば粗利率とGO/STOPの目安が出る「仕入れ可否判定シート(Excel)」を無料配布しています。
不動産取得税・登録免許税の軽減とあわせて、税を「利益」と「売り」に活かす視点は買取再販の税制特例でも整理しています。
まとめ:建物課税・宅建業者特例・経過措置の縮減を押さえる
- 買取再販は建物に消費税、土地は非課税。出口は建物・土地の内訳を意識する
- 免税事業者や個人からの課税仕入れの経過措置は2026年10月から70%へ、その後50%・30%と段階縮小し、2031年10月以降は控除不可。7/5/3割の期間は一の相手からの対象仕入れが年1億円超の部分は対象外(改正前10億円)
- ただし宅建業者は、棚卸資産の建物を適格請求書発行事業者以外から買い取る場合、帳簿保存だけで控除の対象にできる=個人からの買い取りは不利になりにくい
- 2割特例は課税売上高の大きい買取再販業者は通常対象外。3割特例は個人事業者向け
- 土地の非課税売上で課税売上割合が下がりやすい点は控除方式とあわせて税理士と設計する
数字・要件・期限は改正で変わります。具体的な適用は、必ず最新の国税庁の一次情報と税理士で確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 買取再販の再販で消費税はどこにかかりますか?
A. 課税事業者が売主となる再販では建物部分に消費税がかかり、土地の譲渡は非課税です。利益計算では再販価格の建物・土地の内訳を意識して預かる消費税を反映させる必要があります。
Q. 個人から中古住宅を買い取ると、消費税の仕入税額控除はできませんか?
A. できる場合があります。宅建業者が適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産に該当する建物を買い取る場合、帳簿に一定事項を記載して保存すれば仕入税額控除の対象になる特例があります。要件は税理士に確認してください。
Q. 免税事業者からの仕入れの経過措置は、いつどれだけ縮小しますか?
A. 国税庁の令和8年度税制改正特集によれば、2023年10月〜2026年9月は80%、2026年10月〜2028年9月は70%、2028年10月〜2030年9月は50%、2030年10月〜2031年9月は30%、2031年10月以降は控除不可です。数字は改正で変わり得るため一次情報で確認してください。
Q. 買取再販業者は2割特例を使えますか?
A. 通常は使えません。2割特例は基準期間の課税売上高が1,000万円以下などでインボイス登録により課税事業者となった小規模事業者向けで、課税売上高の大きい買取再販業者はもともと課税事業者にあたり対象外となるのが一般的です。
Q. リフォームは免税事業者に頼んでも大丈夫ですか?
A. 発注はできますが免税事業者への支払いは経過措置の割合まで(2026年10月以降は70%など段階縮小)しか控除できないため、適格請求書発行事業者への発注と税負担込みの実質コストで比較することをおすすめします。
出典・参考(一次情報)
数字・要件・適用期限は改正で変わります。最新は各サイトで必ずご確認ください。
