目次
先に結論: フラット35金利が2025年の約1.89%→2026年の約3.21%へ上がったことで、実需の買い手が同じ月返済額(毎月8万円・35年・元利均等)で借りられる額は、約2,460万円→約2,020万円(約440万円・▲18%)に縮みました。これを東日本レインズの都県別 成約㎡単価に当てはめると、「同じ返済額で買える専有面積」も約2割縮小します。買取再販にとっては、実需の"出口"の買い手予算が構造的に縮んだということ。出口価格の上値は重くなり、特に単価の高いエリア・広めの住戸ほど影響が大きい——仕入れ上限は、この購買力の低下を織り込んで逆算するのが安全です。
「金利上昇=保有コスト増」はよく語られます。でも買取再販でもう一つ効くのが、出口=再販の買い手(実需)の"購買力"の低下です。この記事では、公開されている一次データだけを掛け合わせて、その大きさを数字で可視化します。※本記事の指数は当サイトによる試算で、計算式と出典をすべて明示します。個別の与信・物件では結果が変わります。
使ったデータ(すべて公開一次データ)
- フラット35金利:2025年6月 約1.89%/2026年6月 約3.21%(返済21年以上35年以下・融資率9割以下の【フラット35】最頻金利。住宅金融支援機構の公表値)
- 中古マンションの成約㎡単価(都県別・2025年4〜6月期):東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の公表値
- 借入可能額:上記金利をもとに、当サイトが元利均等返済で計算(前提は下記)
試算の前提(金利の影響だけを取り出すための単純化): 毎月返済額8万円・返済期間35年・元利均等。さらに「借入額=購入できる物件価格」と仮定(頭金・購入諸費用・変動金利・年収審査は捨象)。これは絶対額の予測ではなく、「金利が変わると購買力がどう動くか」の傾向を掴むための指数です。
① 金利上昇で「借りられる額」はいくら縮んだか
同じ毎月8万円の返済でも、金利が上がると借りられる総額は減ります。当サイトの計算では——
| フラット35金利 | 借りられる額(毎月8万円・35年・元利均等) | 1.0%比 |
|---|---|---|
| 1.0% | 約2,834万円 | — |
| 1.89%(2025年) | 約2,460万円 | −13% |
| 2.0% | 約2,415万円 | −15% |
| 3.0% | 約2,079万円 | −27% |
| 3.21%(2026年) | 約2,020万円 | −29% |
2025年(1.89%)→2026年(3.21%)の実際の上昇では、借りられる額は約2,460万円→約2,020万円。約440万円、率にして▲18%縮みました。買い手の予算が2割弱しぼんだ、ということです。
② 「同じ返済で買える広さ」に換算する——独自の"出口購買力"指数
借りられる額を、エリアの成約㎡単価で割ると、「その返済額で買える専有面積(㎡)」が出ます。これを金利1.89%時と3.21%時で比べると、出口の買い手が同じ予算で狙える"広さ"の縮み方が見えます(2025年4〜6月期の都県別㎡単価を使用)。
| エリア | 成約㎡単価 | 金利1.89%で買える広さ (借入約2,460万円) |
金利3.21%で買える広さ (借入約2,020万円) |
縮小 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 115.29万円/㎡ | 約21.3㎡ | 約17.5㎡ | −3.8㎡ |
| 神奈川県 | 56.91万円/㎡ | 約43.2㎡ | 約35.5㎡ | −7.7㎡ |
| 埼玉県 | 42.62万円/㎡ | 約57.7㎡ | 約47.4㎡ | −10.3㎡ |
| 千葉県 | 38.19万円/㎡ | 約64.4㎡ | 約52.9㎡ | −11.5㎡ |
いずれも約2割(▲18%)縮みます(比率は金利で決まるため全エリア共通、面積の"絶対の減り幅"は単価が安いエリアほど大きく出ます)。
読み方:たとえば千葉県では、同じ月8万円返済で狙える広さが約64㎡→約53㎡に。ファミリー向け(60㎡台後半〜)を実需で売る出口だと、金利上昇後は"手が届く買い手"が明確に減ることを意味します。都心(東京)は元の面積が小さいぶん、「広さを削る」より「価格帯を下げる/頭金の多い層に絞る」形で効きます。
【考察】買取再販の仕入れ判断にどう効くか(当サイトの見解)
ここからは指数を踏まえた当サイトの考察です。
(1) 出口価格の"上値"が構造的に重くなった。 実需の買い手の借入可能額が2割縮んだ以上、同じ物件を同じ価格で買える層が減っています。出口を強気に置くと、成約まで長引く(=保有コストがさらに乗る)悪循環になりやすい。出口価格は保守的に置くのが基本です(→ 再販価格の決め方)。
(2) 「保有コスト増」と「購買力低下」は"二重"で効く。 金利上昇は、①自社の在庫金利(保有コスト)と、②買い手の購買力(出口)の両方を同時に押します。仕入れ判断では、この2つを別々にではなく同時に織り込む必要があります(→ 金利負担のシミュレーション/金利上昇局面の買取再販)。
(3) 効きやすい/効きにくい物件を見分ける。 影響が大きいのは、単価の高いエリアの広めの住戸(=借入依存度が高く、返済額の上限に当たりやすい)。逆に、総額が小さく現金・頭金の厚い層が買う価格帯は相対的に影響が小さい。仕入れ時点で「この物件の出口の買い手は、金利上昇の影響をどれだけ受けるか」を一段深く見ると、価格の置き方が変わります。
(4) 仕入れ上限は"金利込みの逆算"で。 出口価格 −(リフォーム+保有コスト〈金利込み〉+諸経費+目標利益)= 仕入れ上限。この式の出口価格を購買力低下ぶん保守化し、保有コストも上がった金利で計算する。両方を織り込むと、強気の仕入れは自然に抑制されます。
まとめ
- フラット35金利 1.89%→3.21% で、買い手の借入可能額は 約2,460万→約2,020万円(▲18%)。
- 都県別㎡単価に当てると、「同じ返済で買える広さ」も約2割縮小(千葉で約64→53㎡など)。
- 買取再販では、出口の購買力低下と保有コスト増が二重で効く。出口を保守化し、金利込みで仕入れ上限を逆算するのが打ち手。
- 影響は単価の高いエリア・広めの住戸で大きい。出口の買い手層まで見て価格を置く。
金利は「借りる側のコスト」であると同時に、「売る相手の予算」でもあります。両面を数字で押さえておくと、上昇局面でも強気の高値づかみを避けられます。相場の潮目は 中古相場の転換点2026、金利の推移は 金利データ もあわせてどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. この「出口購買力」指数はどうやって計算していますか?
A. フラット35金利(2025年約1.89%/2026年約3.21%)をもとに、毎月8万円返済・返済35年・元利均等で借りられる額を当サイトが計算し、それを東日本レインズの都県別成約㎡単価(2025年4〜6月期)で割って「買える専有面積」を出しています。金利の影響だけを取り出すため、頭金・諸費用・年収審査は捨象した傾向指数で、絶対額の予測ではありません。
Q. 金利が1.89%→3.21%で、借りられる額はなぜ約18%も減るのですか?
A. 元利均等返済では、毎月の返済額が同じでも、金利が高いほど返済に占める利息の割合が増え、元本に回せる額が減るためです。毎月8万円・35年で計算すると、借入可能額は約2,460万円(1.89%)→約2,020万円(3.21%)で、約440万円・▲18%の減少になります。
Q. これは変動金利の買い手にも当てはまりますか?
A. 本試算は長期固定のフラット35をベースにしています。変動金利は一般に固定より低い水準ですが、上昇局面では返済額が増えるリスクがあります。いずれにせよ金利上昇は買い手の購買力を下げる方向に働くため、出口価格・販売期間は保守的に見るのが安全です。
出典・参考
- 中古マンションの成約㎡単価(都県別・2025年4〜6月期):公益財団法人 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の公表資料。当サイトのデータページ 中古マンション相場データ に数値と出典を掲載。
- フラット35金利(2025年6月 約1.89%/2026年6月 約3.21%、返済21年以上35年以下・融資率9割以下の最頻金利):住宅金融支援機構【フラット35】の公表値。推移は 金利データ に掲載。最新値は【フラット35】公式でご確認ください。
- 借入可能額:上記金利をもとに、当サイトが元利均等返済(毎月8万円・35年)で計算した試算値。
本記事の指数は当サイトによる試算です。ベースの相場・金利は公表された一次データですが、借入可能額の計算には上記の前提(毎月8万円・35年・元利均等・借入=購入価格と仮定)を置いています。実際の購買力は年収・審査・頭金・変動/固定の別で変わります。個別の資金計画は金融機関・専門家にご確認ください。
